今回からは『物理学・天文学』のシリーズに移行します。
物理と聞くと嫌悪感を示す方が多いかもしれないので、
数式などはできるだけ使わずわかりやすさを第一に説明していきたいと思います。
高校物理で挫折してしまった方が物理の楽しさと不思議に気付いてもらえるよう書いていくつもりですので、
わかりづらい箇所があれば随時ご指摘ください。
まず、第1回の今回は『重力とはー重い物体ほど重力は大きい?落下運動と落体の法則って?』として、
「重力」について説明します。
私たちに最も身近な「力」である重力ですが、
感覚的に分かっているつもりでも多くの方は重力を誤解していると思います。
今回は第一回目なので、最も基礎となる「重力とは何か?」という基本的な説明から入りたいと思います。
例のごとく、お時間のない方は最後の「まとめ」だけお読みください<(_ _)>
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重力とは?|重い物体ほど大きい?落下運動と落体の法則
「多くの方は重力を誤解している」と偉そうに書いてしまいましたが、
現在でも重力については多くの謎が残されたままです。
重力は簡単に説明すれば「ある物体が他の存在を引っ張る力(≠万有引力)」と言えるのですが、
これだけでは正確な表現ではありません。
重力を理解するためにも、まずは重力を解明しようとしてきた偉人たちの軌跡を読み解くことで、
基本的な重力の知識を身につけていきましょう。
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重い物体ほど重力は大きい?/アリストテレスと落下運動
重力の一部である「落下運動」について初めて考察したのは、
古代ギリシアの哲学者であったアリストテレス(紀元前384~前322)です。
彼の考えは、
「すべてのものは、本来あるべき場所に戻ろうとする。
重いもののあるべき場所は宇宙の中心(=地球の中心)であるから、重い物体ほど速く地球の中心に向かうのだ。」というものです。
つまり、アリストテレスは「重い物体は落下速度がより速い(≒重力がより大きい)」と考えたわけですね。
有名人が自信ありげに断言するとそんな気もしてきてしまいます。
実際に、この考えはガリレオ・ガリレイ登場する17世紀までは広く信じられていました。
現在の物理学では「重い物体はより速く落下する(=重い物体ほど重力は大きい)」という考えは完全な誤りなのですが、
どこが間違っているかわかるでしょうか?
基礎物理について考えるうえで最も大切なことは、「身近な例で考えてみる」ことです。
「重い物体はより速く落下する」というのなら、重いのに落下速度が遅い例を考えてみましょう。
例えばパラシュートです。
ヘリコプターから「パラシュートを付けた人」と「何もつけない人」が落下したらどちらが速く地面に着地するでしょうか?
当然、何もつけない人の方が速く地面に着地しますね。
しかし「物体の重さ」で考えると、
パラシュートを付けている分だけ、「パラシュートを付けた人」の方が重くなっています。
したがって、パラシュートの例では「重い物体の方が遅く落下した(=重い物体ほど重力は大きい…わけではない!)」のです。
アリストテレスは「落下運動」から重力にメスを入れたつもりでしたが、
「空気抵抗」という別の力によって阻まれてしまいました。
パラシュートの例のように、小難しいことをいっているように感じられる物理の法則も、
身近なもので考えると実はたいしたことは言っていないとわかることが多々あります。
パラシュートでなくても、葉っぱや羽毛などで考えれば、アリストテレスの法則が誤りだと気付けたはずですが、
彼の考え方はおよそ2000年もの間正しいと信じられていました。
そして、「重い物体ほど重力は大きい」という考えを破ったのが、
皆さんもご存じのガリレオ・ガリレイ(1564~1642)です。
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ガリレオ・ガリレイが導いた重力の法則(落体の法則)
イタリアの科学者であったガリレオ・ガリレイは、
アリストテレスの「重い物体ほど重力は大きい」という考えを以下のように論破しました。
実験: 重い球と軽い球をひもで結び落下させる
考え① アリストテレスの考えでは、重い球の方が速く落下し、軽い球は遅く落下する
→ 重い球は軽い球にひもで引っ張られるため、落下速度は重い球単体の時より遅くなる
→ 軽い球を付けることで、落下速度は遅くなった
考え② 重さを比べると、重い球+軽い球 > 重い球 なので、より重い「重い球+軽い球」の方が落下速度は速い
→ 軽い球を付けることで、落下速度は速くなった
いかがでしょうか?
同じ実験でも、見方を変えると結果は変わってくるとガリレオ・ガリレイは指摘したのです。
ここまできて初めて、結果に矛盾の生じるアリストテレスの考えは誤りだったと一部証明されました。
そして、ガリレオ・ガリレイは新たに以下のように考えます。
「重い物体も軽い物体も本来は同じ速度で落下する。
地球上で落下速度が異なるのは空気抵抗によるもので、真空中では落下速度に差はないはずだ。」
その後、ガリレオ・ガリレイの「真空中では落下速度に差はない」という考え方は、
真空ポンプによる実験により正しかったと実証されました。
不思議に感じられるかもしれませんが、真空中では100kgの球と1gの羽毛を同時に落下させても速度に差はありません。
すなわち、「物体の重さ≠重力の大きさ ⇒ 真空中では、落下速度は重さに関わらず一定」ということですね。
※ 動画はBBCによるNASAの重力実験
さらに、ガリレオ・ガリレイは「物体がどのように落下するのか」についても考えを巡らせました。
ピサの斜塔で実験をしたということが伝わっていますが、実際には斜面を転がる球で実験していたと考えられます。
建物から球を落下させても、速度が速すぎて計測できませんからね。
彼の考えとしては、「本当は垂直に球を落下させたいけれど、それでは速すぎて測定できないから、
斜面の角度を徐々に大きくしていって法則性を見つけ出そう」というものです。
実際には「摩擦力」という抵抗が含まれてしまったのですが、彼の実験によって「落体の法則」が導かれました。
落体の法則とは「移動距離は、経過時間の2乗に比例する」というものです。
例えば始めの1秒で1cm進むとすると、2秒後には4cm(=22)、3秒後には9cm(=33)進むということです。
この法則は、斜面の角度を大きくしていっても変わらなかったことから、
角度が90度、つまり垂直の場合でも成り立つと彼は考えました。
これが現在の物理の教科書にも載っている「落下物の移動距離は時間の2乗に比例する」という法則のルーツです。
ここから先は、アイザック・ニュートン(1642~1727)の「万有引力」、
アルバート・アインシュタイン(1879~1955)の「相対性理論」という重いテーマになっていくので、次回に分割します。
以上、『重力とはー重い物体ほど重力は大きい?落下運動と落体の法則って?』でした!
最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>
「重力とは?ー重い物体ほど重力は強い?;落下運動と落体運動」まとめ
「重い物体ほど重力は大きい?」ーアリストテレスと落下運動
・ アリストテレスが初めて重力の一部である落下運動について考察した
・ 彼は「重い物体ほど速く地球の中心に向かう」と考えたが、空気抵抗を無視した考えで誤りであった(重い物体≠強い重力)
・ 彼の考えを否定する身近な例として、パラシュートや羽毛などが挙げられる
ガリレオ・ガリレイが導いた重力の法則(落体の法則)
・ ガリレオ・ガリレイは、アリストテレスの考えを球体実験を通して否定した
・ 彼は「空気抵抗のない空間(真空中)では、重い物体も軽い物体も同じ速度で落下する」と考えた(本来は重さに関わらず落下速度は一定)
・ 後に真空ポンプが開発されたことで、彼の考えが正しかったと実証された
・ また、ガリレオ・ガリレイは球体実験を通して「移動距離は経過時間の2乗に比例する」という落体の法則を導いた