世界一わかりやすい相対性理論の「一般相対性理論」編です。
これまでの記事で「特殊相対性理論」についてはすべて解説しました。
念のため特殊相対性理論編のリンクを貼っておきます。
今回は『世界一わかりやすい一般相対性理論―重力は空間と光を曲げ、時間を遅らせる』として、
”わかりやすさ” を第一に一般相対性理論を説明していきます。
前回からの繰り返しになりますが、
「一般相対性理論」と「特殊相対性理論」の違いは重力を加味するか、加速や減速を加味するかの違いです。
一般相対性理論ではこれらを加味するため、
万有引力のほころびを補完し、より現実的な解釈が可能となります。
この点が ”一般” 相対性理論といわれる所以ですね。
それでは、さっそく説明していきましょう。
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世界一わかりやすい一般相対性理論|重力は空間と光を曲げ、時間を遅らせる
一般相対性理論から導かれる3つの現象
一般相対性理論から導かれる現象は以下の3つです。
1-1、重力は光を曲げる
1-2、重力は空間を曲げる
2、重力は時間を遅らせる
言っていることは簡潔ですが、意味不明だと思います。
この後わかりやすく説明していきますが、
「一般相対性理論における重力」は「万有引力における重力」とは全く別物だということは覚えておいてください。
万有引力では、2つの物質が引き合う力=重力でした。
しかし 相対性理論では「質量が空間を曲げる」と考えています。
そして その曲がった空間を落下する力こそが重力だと主張しているのです。
にわかには信じられないかもしれませんが、このように考えると万有引力の不備がかなり解決していくのです。
そういった説明も含めて、最初に述べた2つの現象、
1-1、重力は光を曲げる
1-2、重力は空間を曲げる
をまずは説明していきましょう。
一般相対性理論:「重力は光を曲げる」をわかりやすく!
今回も宇宙船を使ってわかりやすい実験をします。
宇宙船の中は無重力に、宇宙船自体には重力がかかるように設定したいので、「慣性力」を使わせていただきます。
さっそく難しそうな言葉を出してしまいましたが、「慣性力」は非常に身近な力です。
「慣性力」とはその場にとどまろうとする力のことで、加速する方向とは真逆に働きます。
例えば、ジェットコースターを思い浮かべてください。
ジェットコースターが落下するとき、ふわっと宙に浮いたような感覚がありますよね。
あれは、「地球の重力」と「慣性力というその場にとどまろうする力」がちょうど釣り合って無重力状態に近くなったために生じています。
宇宙船にもこれを当てはめて、架空の無重力状態を作ります。
宇宙船の中は無重力ですが、宇宙船自体は地球の重力に引っ張られて地球に落下しているという設定です。
もし分かりずらければ、
ジェットコースターのふわっとしている状態で実験をしていると考えていただいても構いません。
ジェットコースターに乗っている自分は無重力ですが、
ジェットコースター自体はちゃんと地球の重力で落下しているという設定になりますね。
それでは、実験を開始します。
宇宙船の中でボールを真横に押してみてください。
どのようにボールは動くでしょうか?
宇宙船の中は無重力なので、宇宙船にいる人からすればボールは真横に移動しただけですよね。
では、” 地球にいる人 ” からみたらボールはどのように移動して見えますか?
宇宙船は重力によって落下してきているので、下の絵のように放物線を描いているようにみえるはずです。
極めて当然の結果のように感じられると思います。
地球にいる人からすれば、確かにボールは真横に力を加えられましたが、そもそも地球の重力で落下しているのですから。
横と下に力が加わっていれば、もちろん斜めに落ちてきますよね。
当たり前のことばかりでイライラさせてしまっているかもしれません。
では、ボールを「光」に置き換えてみましょう。
どうなるでしょう?
これも当然、ボールの時と同様「放物線を描いて落下する」ようにみえます。
つまり、「重力によって光は曲がった」ということです。
これで「1、重力は空間(光)を曲げる」の「光」はクリアです。
実際に、太陽の周りでも光が曲がることは観測されています。
おそらくここまでは簡単に理解していただけたと思いますが、多くの方がこのステップで躓いてしまいます。
アインシュタインの理論では、光は質量ゼロのはずなのになぜ重力の影響を受けるのか…と。
どうしても万有引力の法則が頭から離れないために理解しがたいのですね。
一般相対性理論においては「重さ=重力」ではなく、「空間の歪み=重力」です。
最初に述べたとおり、相対性理論と万有引力の重力の捉え方は全く別のものです。
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一般相対性理論:「重力は空間を曲げる」をわかりやすく!
次に「重力は空間を曲げる」のわかりやすい説明に移りましょう。
ここが最難関とされていますが、「光」のときと同様に簡単に理解していただけると思います。
では、実験スタートです。
今回はボールを2つ使います。
先程のように宇宙船の中だけ無重力という設定で、ただボールを空中に置いておくだけです。
ここで「地球の重力」について整理しておきます。
今回はわかりやすくするために、
「地球の重力によって、ボールは地球のちょうど中心に引っ張られる」と考えましょう。
厳密には地球の中心点に引っ張られているわけではありませんが、説明をわかりやすくするための簡略化です。
すると、2つのボールは確かに地球に向かって落下してくるわけですが、完全に落下する方向が一致しているわけではありません。
ボールの位置が違えば、地球の中心までの方向も少しだけ違いますよね。
そして、2つのボールは「地球の中心」に近づくにつれてどんどん接近していき、ちょうど中心に到達すると完全に重なることでしょう。
しかし、宇宙船の中のことだけ考えてみてください。
完全な無重力という設定なので、どこからも一切「力」は加えられていません。
それなのに、勝手にボールが近づいていく奇妙な現象が起きているのです。
地球の人からすれば当然の結果でも、宇宙船の中の人にとっては超常現象です。
家の中の家具が勝手に動いていたらどう思いますか?
原理としては全く同様で、触ってもいないボールが勝手に動いているわけです。
アインシュタインはこれを「重力によって空間が曲がっているからだ」と考えました。
ちょうど坂道をボールが転がっていくように、
重力が坂道(空間の歪み)を作ってボールがそれに沿って落下しているのだ…と。
この考え方が「1、重力は空間(光)を曲げる」の「空間」編です。
あまりに突飛な考えに思えますが、
この解釈に基づくと万有引力で説明できなかった「水星の近日点移動」など多くの現象が説明できるようになりました。
さらに、この「1、重力は空間(光)を曲げる」という考えが正しいとすると、
質量がとんでもなく大きい物質はとんでもなく大きな空間の歪みをもたらすことになります。
質量によっては、光さえも脱出できなくなるほどの歪みになるでしょう。
この「光が脱出できないほどの空間の歪み」というのが、まさに『ブラックホール』のことなのです。
「一般相対性理論」の誕生により「ブラックホール」という天体が存在するかもしれないと考えられるようになり、
現在では”はくちょう座X-1”などブラックホールの候補となる天体が多数発見されています。
ブラックホールの説明は別記事に回すとして、ひとまず「1、重力は空間(光)を曲げる」の解説は終えて次に進みましょう。
続いては「2、重力は時間を遅らせる」についてです。
こちらは簡単にわかりやすく説明できるので、簡潔に終わらせますね。
一般相対性理論:「2、重力は時間を遅らせる」をわかりやすく!
必要な知識は、相対性理論【概要編】で説明した「② 光速度不変の原理」という原理だけです。
復習ですが、光速度不変の原理とは「光の速度は常に一定」だということです。
空間が曲がったり、変なエネルギーが加わっても光速は 30万km/s で絶対に変わらないという原理です。
では、わかりやすい実験に移りましょう。
用意するのは、非常に太い1本の光だけです。
その光が地球の重力で曲がった場合を考えます。
すると、同じ1本の光なのですが、地球に近い方が少し短くて、遠い方が少し長くなってしまいます。
太いロープで考えた方がわかりやすいかもしれませんが、
ロープを曲げると、曲げた側が縮んで(短くなる)外側は伸びます(長くなる)よね。
光でそれをイメージしてください。
光が太いがために、場所によって移動距離が変わってしまっているのです。
しかし、「光速度不変の原理」により光の速さは絶対に変わりません。
距離を求める公式は、(距離)=(速さ)×(時間)でしたね。
この「速さ」に当たる光速は絶対に変わらないので、
距離が長いということは時間がよりかかっているということです。
つまり、外側の時間の方が内側よりも長い(速い)ということになります。
言い換えると、内側の方が時間がゆっくり流れているということです。
※ 時間の速さと遅れの関係が曖昧になった方は、【1、光速に近づくと、時間の流れが遅くなる】の拍手の例を思い出してください
このとき、内側の方が地球に近い、つまり重力が大きいので、
「重力が大きいほど、時間はゆっくり流れる」
⇒「2、重力は時間を遅らせる」
となるのです。
少し駆け足になってしまったかもしれませんが、ここに関しては何となくの理解でも問題ないと思います。
大事なのは、「重力が空間を曲げる」という考え方・導き方のほうです。
特に、慣性力によって重力を打ち消す(慣性力と重力が等価)という考えは、
アインシュタインの最高のヒラメキだったと評されているほどです。
以上で「一般相対性理論」の記述は一区切りとします。
次回からは「ダークマター」、「ダークエネルギー」、「ブラックホール」をそれぞれ説明していきたいと思います。
ブラックホールで時間は止まる、ホワイトホールは存在するのか、暗黒物質は確かにあった…などなど、興味があるお方はぜひお読みください。
以上、『世界一わかりやすい一般相対性理論―重力は空間と光を曲げ、時間を遅らせる』でした!
最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>
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「世界一わかりやすい一般相対性理論|重力は空間と光を曲げ、時間を遅らせる」まとめ
一般相対性理論
・一般相対性理論と万有引力では重力の考え方が全く異なる
・ 万有引力では「2つの物質が引き合う力=重力」、一般相対性理論では「質量による空間の歪み=重力」
1-1、重力は光を曲げるをわかりやすく!
・ 宇宙船での架空実験で検証する
・ 宇宙船内は無重力に、宇宙船自体は地球の重力で落下している設定で、宇宙船の中でボールを横に押す
・ 地球から見れば、宇宙船が移動しているためボールは放物線を描く軌跡をたどる
・ よって、ボールは地球の重力によって曲がったといえる
・ この現象は質量のない光でも同様にみられるため、「重力は光を曲げる」といえる
1-2、重力は空間を曲げるをわかりやすく!
・ 次に同じ宇宙船内でボールを2つ置いた場合を考える
・ 地球の重力の影響により2つのボールは互いに接近する
・ 宇宙船内にいる人にとっては、無重力状態のはずなのにボールが勝手に動いているようにみえ、「重力は空間を曲げる」といえる
2、重力は時間を遅らせるをわかりやすく!
・ 太い光が地球の重力で曲がった場合を考える
・ すると、内側では光の移動距離が短く、外側では長くなる
・ 光速度不変の原理から光速は絶対に変わらないため、距離が長い=時間がかかっている
・ よって、光の内側の方が時間の流れが遅い
・ 光の内側は外側よりも重力の影響が大きいことが原因でより曲がっているため、「重力は時間を遅らせる」といえる