物理学・天文学・気象学

E=mc2:光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える|わかりやすい特殊相対性理論3

投稿日:2016年5月24日 更新日:

 

『世界一わかりやすい相対性理論』シリーズの詳細版です。

 

今回は「特殊相対性理論」の1つである、

「光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える」

原理についてわかりやすく解説します。

E = mc2-Mass

 

「質量(=エネルギー)とはどういう意味?」、「速く移動すれば太るということ?」などを詳しく、わかりやすく説明していきます

以前の記事である【概要編】を読んでおいていただけると助かるのですが、初見の方でも理解していただけると思います。

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E=mc2:光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える|わかりやすい特殊相対性理論Part3

「質量とエネルギーの関係」前置き&事前知識

 

さっそくタイトルに疑問を感じる方がいるかもしれませんね。

「質量(=エネルギー)」ってなんだ?…と

 

実は、特殊相対性理論で最も重要とさえ言えるのが「質量とエネルギーは同じもの」という概念です。

 

にわかには信じられないかもしれませんが、

E=mc2」という式はご存じでしょうか?

知らないといわれると大変ショックなのですが、おそらく科学界で最も有名な式だと思います。

 

E(エネルギー)は、m(質量)にc(光速)の2乗を掛けたものに等しい」ということを示しています。

光速は30万km/sで不変(定数)なので、エネルギーと質量は完全に対応する関係にあります

 

ある物体にエネルギーを加えれば質量が増えるし、その逆も同様です

あまりこの辺の話を深堀りしても仕方がないので、話を戻しましょう。

そもそも「光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える」という原理によって「E=mc2」という式が誕生したのですから…。

 

では、説明に移ります。

 

原理をかみ砕くと、「速く移動するほど、質量(=エネルギー)が増える」ということですね

ここで勘違いしてほしくないのですが、増えるのは「質量」です。

「重さ」ではありません

 

まずは「質量」と「重さ」についてきちんと整理しておきますね。

 

「重さ」とは「重力の大きさ」のことです。

地球で60kgの「重さ」の人は、月に行けば10kgの「重さ」になります。

 

一方で、「質量」は「動かしにくさ」を表す指標で、地球で60kgの「質量」は他のどこでも60kgの「質量」です

つまり「質量」は重力の影響を一切受けず、どこにいっても同じ値です。

 

そして「質量=動かしにくさ」という考えが非常に重要です。

 

100gの野球ボールを投げる場合と10kgのボーリング玉を投げる場合にどちらが大変か考えてみてください。

当然、10kgの方が大変、つまり「動かしにくい」ですよね。

 

 「動かしにくさ」が「質量」そのもので、このことが後で重要になってくるので覚えておいてくださいね

 

 

かなりくどく説明してしまいましたが、なぜここまで冗長に書いているかといえば、

必ずと言っていいほど「光速で走ったら太るんですか?」という質問を受けるからです

 

答えは当然、太りません

 

少しわかりづらいかもしれませんが、「質量の増大」といっても体積や原子数が増えるわけではなく、

すべての原子の動きにくさが一様に大きくなるというイメージです。

 

そのため、姿も形も一切変化せず、見た目上は何の変化もありません。

もっと言えば、先程の「電車が縮む」例のように、当事者からすれば何も変化は生じていないのです

 

外部の人から見ると、「質量が増えた」ように映るだけです。

前置きが長くなってしまったので、いいかげん具体的な解説に移りますね。

 

今回もアインシュタインのオリジナルの論文(タイトル「E=mc2」)を参考にわかりやすく説明していきます

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E=mc2:質量とエネルギーは同じもの

 

今回は完全にアインシュタイン自身が考案した実験です。

かみ砕いてわかりやすく説明するのでご安心ください。

 

実験は、地球に向かって移動している宇宙船で行います。

 

宇宙船の真ん中に光を発する「発光器」を置きます

下の絵のように左右に光を同時に照射した場合を考えましょう

相対性理論9

 

光に質量はありませんが、エネルギーはあるので光を放つと必ず反動があります

ちょうどピストルを撃ったときに反動があるイメージで結構です。

 

光を放った逆方向に反動があるのですが、今回は左右同時に照射しているので、発光器に反動はありません

正確には反動が相殺されている状態です。

 

”宇宙船に乗っている人” からみれば、発光器から左右に光が放たれただけで、発光器は微動だにしていません

 

では、”地球” からみるとどうでしょう?

 

宇宙船は移動しているので、下の絵のように、光の軌跡はこちら側に近づいてきています。

相対性理論8

 

光が前方に照射されているということは、発光器は後ろ側に反動を受けるはずです

今回は反動が相殺されることはありません。

 

つまり、地球から見れば発光器は後ろに下がっていくはずなのです。

しかし、宇宙船に乗っている人の視点では発光器は微動だにしていなかったはずです。

 

…?

 

この発光器の位置には明らかに「矛盾」があります

宇宙船でみる位置と地球でみる位置が完全にずれています

 

宇宙船と発光器に速度の差がない以上、「時間の遅れ」や「空間の縮み」では説明できそうにありません。

 

 

では、どういうことか?

 

この現象をアインシュタインはあるがままに受け入れ考察します。

発光器は「光」というエネルギーを失ったことで、「動かしにくさ」を失ったのではないか』と。

つまり、「光を放ったことによる後方への反動分だけ、前方方向に加速したんだ」…と。

かなり強引な解釈ですが、確かに説明はつきます。

 

ところで、「動かしにくさ」とは何という指標で表していましたか?

 

くどすぎるほど冗長に説明していましたよね。

そう、「動かしにくさ=質量」です。

 

したがって、言い換えば「エネルギーを放出したら、質量が減った」ということです。

質量が減るということは、動きやすくなるという事なので、発光器は前方に加速します

 

この「加速」と「光を放出したことによる減速」がちょうど相殺しあったから、

地球からみても発光器は動いていないようにみえたとアインシュタインは説明しました

 

このように「エネルギーが減った分だけ質量(動かしにくさ)も減った」と考えれば、

「発光器の位置が違う」という矛盾については一応説明がつきます。

 

そしてアインシュタインは「エネルギーと質量は対応する関係にある」という発想をもとに、

「E=mc2」というエネルギーが質量に比例する式を導きます。

 

「E=mc2」の式が1932年の水素の原子核破壊実験で正しいと証明されたことで、

「エネルギーの放出により質量が減った」という結論も妥当なものとなりました。

※ 「E=mc2」の求め方は省略します。ガンマ係数の求め方はこちらの記事で。

 

 

光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える|特殊相対性理論Part3

 

さて、最後の詰めに移りましょう。

もう何の話だったか忘れているかもしれませんね。

 

導きたい結論は「光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える」ということでした

ここまでで「質量とエネルギーは同じもの」だという結論には至りました。

 

あとは簡単です。

 

「光速に近づく」、つまり「速くなる」ということは「運動エネルギーが大きくなる」ということです

「運動エネルギー」というのは、運動している物体がもっているエネルギーのことです。

 

例えば、車が衝突する場合を考えてみてください。

 

10km/h の車と60km/h の車が壁に衝突した時、どちらの方が衝撃が強いですか?

 

もちろん60km/h の車のほうが大惨事になりますよね。

 

これはより速い物体が持っている運動エネルギーの方が大きく

その運動エネルギーが衝突というエネルギーに変換されたためです。

 

今回の車の例では、「60km/h の車」がもっている運動エネルギーの方が大きいので、

衝突のエネルギーもより大きくなったということです。

 

そして「運動エネルギー」も当然「エネルギー」の1種です

 

思い出してください。

質量とエネルギーは同じもの」でしたよね。

 

つまり、「速く動く ⇒ エネルギーが大きくなる=質量が大きくなる」ということです。

これが「光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える」という原理そのものです

 

では、実際に速く運動すれば質量も増えるのでしょうか?

 

答えはYESです。

 

速く走れば走るほど、確かに体重は増加します。

ただし、前述したとおり「太る」わけではありません。

体重をはかる時にはできるだけじっとしておいた方がいいかもしれませんね(笑)。

※ 実際には体重計で測れるようなレベルの増減はありません

 

ちょっとした雑学ですが、私たちの体の質量のほとんどは運動エネルギーによるものです

細胞よりもずっとずっと小さい「クォーク」という素粒子の運動エネルギーが質量(体重)としてふるまっているのです。

 

また、『元素』の記事で何度も登場した「加速器(粒子を加速させる装置)」を使えば、

エネルギーが質量に変換(置換)されていることがわかりやすく確認できます。

光速の0.7倍辺りまで加速させても質量は1.4倍に増える程度ですが、

光速の0.99倍では7.1倍ほどに質量は増えます。

 

さらに加速させていくと、加えたエネルギーが質量に置換され続け、決して光速を超えることはありません。

これが「光速が最速」といわれる理由の1つでもあります

 

 

さて、いかがだったでしょうか?

 

これで「特殊相対性理論」の3つの結論についてはすべて説明したことになります。

次回は「実際にどのくらい時間や空間が変化するのか」について説明し、

その後「一般相対性理論」の詳しい説明に移ります。

 

「特殊相対性理論」の結論に対する記事はこれで一区切りとしますが、

もし少しでも理解の手助けになったのであれば、本当に書いたかいがあったというものです。

 

すべてを理解していただけるように書いたつもりですが、十分には理解できなかった点があるかもしれませんね。

ご要望があれば「E=mc2」の求め方などの記事を追加するかもしれませんが、

この辺りは数式だらけになるので、書籍などで補完していただけると助かります。

センター試験レベルの数学の知識があれば十分理解できる内容ですので…。

 

以上、『光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える:E=mc2/世界一わかりやすい特殊相対性理論Part3』でした!

最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>

 

 

「光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える:E=mc2/世界一わかりやすい特殊相対性理論Part3」まとめ

光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える

・ 地球に移動している宇宙船での思考実験

・ 宇宙船の真ん中に発光器を置き、左右に光を同時に照射した場合を考える

・ 地球視点では、光が前方に照射されているようにみえるため、発光器は後ろ側に反動を受けているはず

・ しかし、実際には発光器に動きはないので反動の分だけ前方に加速していることになる

・ 加速する要因として、発光器が動きやすくなった、つまり質量の減少が考えられる

・ アインシュタインは「発光器は、光というエネルギーを減少した分だけ質量が減少した」と考えた

・ この発想をもとに「E=mc2」というエネルギーが質量に比例する式が導かれ、のちに実証された ⇒ 質量とエネルギーは同じもの

・ よって、運動エネルギーが大きければ質量も大きいことになる

⇒ 光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える

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