重力の第2回目です。
前回の『重力とは?ー重い物体ほど重力は強い?』では、落下運動と落体運動を説明し、
重い物体ほど落下速度が大きいわけではないこと、また真空中であれば重さに関わらず落下速度は一定であることを説明しました。
今回はより「重力」に迫っていくために、『万有引力とは?|万有引力と重力は同じ?万有引力と重力の関係は?』として、
重力そのものだと勘違いされやすい「万有引力」
について説明します。
数式は使わずにわかりやすく説明していくので、ぜひお付き合いください。
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万有引力とは?|重力は同じ?/重力との関係は?
万有引力とは?|重力との関係1
「万有引力の法則」を導いたのはアイザック・ニュートン(1642~1727)です。
ちょうどガリレオ・ガリレイが亡くなった年に彼は誕生しました。
有名な逸話として、リンゴが木から落ちるのをみて思いついたとされていますね。
その真偽は不明ですが、一応ニュートンの知人の回顧録にはそう記されています。
万有引力とは、字のごとく「万物(あらゆる物体)が有する互いに引き合う力」のことです。
不思議かもしれませんが、近くの机やペンなどですら私たちを引っ張り、同時に私たちもそれらを引っ張っています。
しかし、ペンなどの万有引力は極めて弱いので、
摩擦力などによって完全に打ち消されてしまい、私たちは感じることができません。
もう少しだけ詳しく説明しましょう。
万有引力は、2つの物質の重さに比例し、物質同士の距離の2乗に反比例します。
つまり、重い物体同士だと引き合う力が強くなる一方で、間に距離があるほどに引き合う力が弱くなるのです。
そのため、机やペンといった軽い物質同士では万有引力が摩擦力を越えることはないので微動だにしませんが、
一方の対象が「地球」というとんでもなく重い物質となると他の力を越えて引き付けられるというわけです。
ここで、疑問に思われる方がいるかもしれません。
「万有引力は重い物体の方が強いのに、なぜ落下速度は重さによらないのか」と。
確かに100kgの球と1gの羽毛を比較すると、地球との万有引力は10万倍も違いますよね。
そんなに引き合う力が違うのに、同じ速度で落下するのは不思議なように感じられます。
落下速度が万有引力によらない理由は、
物体における加速度(どんどん速くなっていくための力)が物質の質量に反比例するからです。
もっとわかりやすく説明しましょう。
例えば、バドミントンの羽を打ち返すのと、バレーボールの球を打ち返すのではどっちの方が楽でしょうか?
これは当然、同じスピードであってもバドミントンの方が楽に打ち返せますよね。
つまり、感覚的なイメージ通り、軽い物体ほど動かしやすく、重い物体ほど動かしにくいのです。
これは摩擦力が働かない場合でも成り立ちます。
そして、この重い物体の動かしにくさと万有引力が質量に比例するのがちょうど打ち消しあって、
落下速度は質量に依存しないことになるわけです。
これで理解していただけたでしょうか?
数式を出して説明したいところですが、物理嫌いを助長させてしまいそうなので割愛します。
一般的な知識としては「万有引力が強くても落下速度が速くならないのは、重い物体ほど動きにくいから」という認識で問題ありませんが、
物理学を専攻する予定の方は専門書で反作用や重力異常に対する数学的な知識も身につけておいてくださいね。
さて、少し話が長くなりましたが、肝心の「万有引力と重力は同じなのか」について説明していきましょう。
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万有引力は重力と同じ…ではない!|重力との関係2
知識の浅い先生だと「万有引力と重力は同じ」だと勘違いしている方もいますが、
結論から述べると、少なくとも地球の重力に関しては、万有引力と重力は全くイコール関係にはありません。
万有引力が重力と同じかどうかに関しては、どの重力を扱うかによります。
まずは地球の重力をみていきましょう。
地球は自転、つまり地球自らが回転運動をしています。
このとき私たちは地球の外側に向かって「遠心力」を受けています。
ちょうどジェットコースターで受ける外側に放り出されそうになる力のことです。
普段生活していて遠心力を感じることはまずありませんが、
今現在でも確かに地球の外側に向かって私たちは遠心力を受けています。
もうお分りかもしれませんが、「地球の重力」といった場合には、「万有引力から遠心力を差し引いた力」になります。
加えて、「万有引力」と一言でいっても、ちょうど足元に重い物質が多く存在していれば引力は強くなります(=重力が大きくなる)し、
「遠心力」は赤道で最大となるので赤道に近づくほど重力は小さくなります。
何が言いたいかというと、地球の重力は場所によって変化し一定ではありません。
実際に、遠心力の大きい赤道と小さい北極を比べると0.5%ほども重力に差がでてきます。
まとめると、地球のように自転している天体の中の重力は「万有引力と遠心力の合力であり、場所によって大きさは異なる」と言えます。
すなわち、「万有引力と重力は同じではない」ということですね。
では、地球の中ではなく「天体どうしの重力」で考えるとどうなるかといえば、
正確ではありませんが、ほぼ万有引力と一致する(同じ)と考えて問題ありません。
実はニュートンが高く評価されている理由の1つは、万有引力が宇宙にも適応できる法則だったということです。
1600年代といえば、まだ地球がすべての中心であり、
太陽や月などの宇宙空間とは完全に別世界だと考えられていました。
そんな価値観の中でニュートンは、リンゴが木から落ちるのも月が地球を回っているのも同じ原理に基づく現象だと唱えたわけですね。
物理学の世界観を転換させると同時に、人々の世界観まで改革していったわけです。
しかし、そんなニュートンですら重力を十分に説明できたわけではありません。
ニュートンの重力を補足・追記していったのが、
20世紀最高の科学者ともいわれるアルバート・アインシュタイン(1879~1955)です。
高校物理までの「重力」の知識ならば万有引力まででも問題ないのかもしれませんが、
より正確かつ重要な知識を身につけるために次のステップに進みましょう。
少し長くなってしまったので次回に回しますが、
次は皆さんも名前だけは聞いたことがあるであろう「相対性理論」について解説します。
難しそうなイメージ通り、説明がやや困難ではあるのですが、何が何でもわかりやすく書いていくつもりですので、
少しでも興味のあるお方はどうぞお付き合いください。
以上、『万有引力とはー万有引力と重力は同じ?万有引力と重力の関係は?』でした!
最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>
「万有引力とは?|万有引力と重力は同じ?万有引力と重力の関係は?」まとめ
万有引力
・ 万有引力の法則を導いたのはアイザック・ニュートン
・ 万有引力とは、2つの物体どうしが互いに引き合う力のこと
・ あらゆる物質間に働くが、質量が小さい場合には摩擦力などによって完全に打ち消されてしまい、感じることはできない
・ 万有引力は、重い物体同士だと引き合う力が強くなる一方で、間に距離があるほどに引き合う力が弱くなる
・ 万有引力が物体の落下速度に影響を及ぼさない理由は、重い物体ほど動きにくい性質があるため
万有引力と重力は同じ?
・ 地球の中の重力の場合、万有引力と重力は同じではない
・ 地球は自転しているため、地球の外側に向かって遠心力が働く
・ 地球の重力は、万有引力から遠心力を差し引いた力であり、場所によって大きさは異なる(万有引力も遠心力も場所によって大きさが異なる)
・ 天体どうしの重力の場合では、ほぼ万有引力と一致すると考えて問題ない