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生物学

『日本人が太りやすい理由』-倹約遺伝子が原因?インスリンの影響?

更新日:

 

前章の『肥満と脂肪細胞』の続きです。

前回は「肥満になる原因とメカニズム」を説明し、「日本人はアメリカ人に比べて太りやすい傾向がある」と述べました

 

今回は『日本人が太りやすい理由-倹約遺伝子が原因?インスリンの影響?』として、

「日本人が太りやすい原因」と最新の「やせ薬に関する研究」を紹介したいと思います。

 

後半の「やせ薬」に関しては、薬機法(昔の薬事法)が怖いので、

具体的な商品紹介ではなく研究例を挙げるだけにとどめてあります。

時間ができ次第、法令を読み込んで商品紹介もしていきたいと考えているのでご了承ください<(_ _)>

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『日本人が太りやすい理由』- 倹約遺伝子が原因?インスリンの影響?

「倹約遺伝子」ー日本人の太りやすさは遺伝子にあり!

 

「倹約遺伝子」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

 

一度だけテレビで紹介されているのを観たことがありますが、あまり有名ではないかもしれません。

「倹約遺伝子」は、遺伝子の変異によって、本来とは少し異なる特性をもつようになった遺伝子です。

 

この遺伝子は「倹約」と名がつく通り、

変異によって「エネルギー代謝を抑制したり、エネルギーの吸収効率を向上させる効果」をもっています。

 

今風に言い換えると、「省エネ、コスパ向上」するわけです。

なんとなく良いことのように思えてしまいますが、それだけ脂肪の消費が抑えられるということです。

 

少し具体例を出しましょう。

脂肪燃焼に関わる遺伝子に「β3アドレナリン受容体遺伝子」というものがあります。

 

この遺伝子は、本来ダイエットの強い味方です。

※ 白色脂肪細胞では中性脂肪(:動脈硬化の原因)の分解を促し、褐色脂肪細胞では遊離脂肪酸(:血中の脂肪)を消費してくれます

 

現代人にとっては「β3アドレナリン受容体遺伝子」は大変ありがたい遺伝子なのですが、この遺伝子には変異がよく見られます。

 

変異した場合、「倹約遺伝子」となって1日当たり200キロカロリーもエネルギーを「節約」するようになります

 

200キロカロリーというと、バナナ2本分、5枚切りのパン一枚分、ご飯軽く一杯分などです。

これが「毎日」続くわけですから、当然「太りやすい体質」となりますよね。

 

「そんなの一部のヒトだけでしょ?」 と考えていただけたら、今回いろいろと論文を読んだ甲斐がありますw

実はこの遺伝子、日本人の約3割が「倹約遺伝子」に変異しています

この数値は欧米人の2~3倍あります。

 

そのため、前章でも説明した「日本人は肥満に弱い」につながり、「日本人は太りやすい体質」である一因となっているのです。

 

ちなみに、200キロカロリーは脂肪に換算すると29gほどです。

一カ月で1kg弱、一年だと10kg以上も太りやすいという計算になります

1つ倹約遺伝子をもつだけで、これだけ差が生じるとは怖いですね…。

 

しかし、当然のことながら「体内の脂肪含有量が高ければ脂肪貯蓄は抑えられ、同時に燃焼効率も向上する」傾向にあります

 

この傾向は白色脂肪細胞数が増加しないことが前提(前章参照)ですが、

必ずしも「カロリーすべてが脂肪に変わって体重増加につながるわけではない」ということは覚えておいてください。

 

日本人に多くみられる「倹約遺伝子」は「β3アドレナリン受容体遺伝子」だけではありません。

 

いくつかありますが、

例えば「UCP1」という褐色脂肪細胞での脂肪捻出を促進する遺伝子も日本の肥満女性の2割以上に変異が見受けられます。

 

逆に、変異がダイエットにプラスに働く遺伝子も存在するのですが、書いていくときりがないので、

次は脂肪に最も密接な臓器である「すい臓」について説明します。

 

今回は蛇足なく進めていきますよ。

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インスリンと脂肪生成メカニズム

 

インスリン」はみなさんもよくご存じだと思います。

 

インスリンはすい臓から分泌され、主に血糖値を下げる役割があります。

 

「血糖値」と聞いてもピンとこないかもしれないので、「食べ物が脂肪に変わるまでの流れ」を最初に説明しますね。

ここは前章の「肥満のメカニズム」で紹介しきれなかったところなので、少し丁寧にお話しします。

 

まず食べ物を食べると、炭水化物などはブドウ糖へと変換さて小腸から吸収されます

このときブドウ糖は血液中に放り込まれるので、ブドウ糖の濃度が高くなります。

 

この「血液中のブドウ糖濃度」が「血糖値」のことです。

 

血糖値があがると、すい臓からインスリンが分泌されて、白色脂肪細胞に「ブドウ糖がいっぱいあるよ~」と伝えます。

 

すると白色脂肪細胞は血液中のブドウ糖を細胞の中に取り込んで、中性脂肪へと変換します

 

これが「インスリンが血糖値を下げるメカニズム」であり、同時に「脂肪がたくわえられるメカニズム」でもあります。

 

では、このメカニズムが「日本人が肥満に弱い理由」とどう関わってくるのでしょうか?

 

 

日本人が太りやすい理由ー 「肥満と糖尿病」

 

脂肪細胞から分泌されるホルモンのなかに「TNF-α」という諸刃の剣があります。

このホルモンは、炎症の原因になる一方で、体を守ってくれるサイトカインという必要不可欠な存在です。

 

健常な方の場合には一長一短の特性をもっていますが、肥満になると一気に性悪な態度をみせます。

 

上記の「インスリンが血糖値を下げるメカニズム」の説明で、

「インスリンの指示を受けてブドウ糖の回収を行う」と説明しましたが、

「TNF-α」は、肥満が進むとこの連絡経路を阻害します。

 

つまり、いくらインスリンが指示を出しても、ブドウ糖が血中から回収されなくなります

 

すい臓はそんな状況を知らないので、「まだブドウ糖がいっぱいあるな…インスリンもっと出さなくちゃ」と考え、

インスリンを分泌し続けます。

 

しかし、「TNF-α」の妨害で血糖値は下がらない…。

 

こんな状態が数年続けば、すい臓はどんどん疲れていってしまい、ついにはインスリンを出せなくなります

するとブドウ糖は減ることなく血液中を漂い続け…、最後に尿として排出されます。

 

これが「糖尿病のメカニズム」ですね。

すなわち、「すい臓の機能低下がメタボリック症候群の1つである糖尿病を誘発する」ということです。

 

話を戻しましょう。

今回の議題は「日本人が太りやすい理由」でした。

 

実は糖尿病のキーとなっている「すい臓」、日本人は欧米人と比べて機能が弱いと考えられています。

 

十分なデータが揃っていないのが現状ですが、

糖尿病発症時期が相対的に早いこと、さらに日本人に欧米のような巨漢の方がいないことから推測されます。

 

私の専門は「遺伝学」なので、

その見地から考察すると日本人と欧米人のすい臓に関わる遺伝的構造に顕著な(有意な)違い」は認められません

 

加えて、日系の方々の中には200kg超の肥満が認められることから、

白色脂肪細胞の数」が影響しているのではないかと考えられます。

 

ブドウ糖の吸収が「TNF-α」で妨害されたとしても、吸収する母数自体が多ければ「糖尿病」の進行は抑えられる可能性があります。

つまり、成長期の食生活が影響しているというわけですね(白色脂肪細胞が成長期の過食で異常増加するためです)。

 

日本の高校生とアメリカのそれを比べても、圧倒的に肥満率は日本の方が低いことを論拠の一因としています。

現在では、まだ日本の肥満児が少ないですが、今後ライフスタイルがより欧米化していくと「糖尿病」に関しては耐性がつくのかもしれません。

逆説的でおかしいですが…w

 

最後は「やせ薬」についてです。

今度こそ簡潔に終わらせます。

実際に大した研究成果がでていないように個人的には感じているので、

反響が大きければ「薬機法」なる法律を読み込んで別記事で詳しく紹介したいと思います。

 

 

やせ薬の正体ー「海外と日本の実情」

 

「服用するだけでやせられる薬」…夢のような存在です。

現在までのところ、「脂肪の吸収を妨げる薬」や「食欲を低減させる薬」は海外で販売されています

特にアメリカでは巨大マーケットになりうるコンテンツとして研究が進んでいます。

 

一方の日本では漢方薬を除けば、認可されている「やせ薬」はサノレックスという薬1つだけです。

ただし、日本にも「海外のやせ薬」と類似の効果をもたらす商品は多数あります

みなさんもよくご存じの「トクホ」ですね。

トクホ認定されている「ヘルシア緑茶」には「脂肪を消費しやすくする」と記載されています。

ヘルシア緑茶

※ 画像は花王HPより転載(http://www.kao.co.jp/healthya/ryokutya/)

 

基本的に「海外のやせ薬」も同じようなものがほとんどです。

加えて、あらゆる食品に共通することですが、

すべからく副作用は生じるので「やせ薬」という眉唾ものには手を出さないことをお勧めしておきます。

 

幼少期からの過剰摂取を気を付け、手遅れになる前に適度に運動したほうが賢明です。

メタボ予備軍の自分がいえる進言ではありませんが…。

 

さて、何も話が進んでいないので「やせ薬」の研究例をご紹介しますね。

せっかくなので、日本における研究を紹介しましょう。

 

東大教授の酒井先生の研究です。

「マウスの筋肉にあるPPRAδを活性化させると、筋肉中の脂肪が消費され、過剰な脂肪分だけ燃焼できる」という内容です。

 

PPRAδを活性化させたマウスは、運動をしていないにもかかわらず体重増加が約6割抑えらるという結果が得られています。

つまり、ヒトのPPRAδもマウス同様活性化できれば、服用しただけでやせられる…という理論にはなりそうですね。

 

こちらの論文は無料で閲覧できるので、興味のあるお方はぜひ検索してみてください。

Takahashi S, Tanaka T, Sakai J: New therapeutic target for metabolic syndrome: PPARdelta. ENDOCR J 2007, 54:347-357.

 

今回はこの辺で終わらせますね。

ご要望があればいろいろと論文を調べたうえで別枠でご紹介しますので。

以上、『日本人が太りやすい理由- 倹約遺伝子が原因?インスリンの影響?』でした!

 

「日本人が太りやすい理由- 倹約遺伝子が原因?インスリンの影響?」まとめ

日本人が太りやすい、または肥満に弱い理由

・ 倹約遺伝子の保有率がたかいため

・ すい臓が相対的に弱い可能性があるため

倹約遺伝子

・ 倹約遺伝子とは、遺伝子の変異によって、脂肪をたくわえる効果をもつようになった遺伝子のこと

・ β3アドレナリン受容体遺伝子やUCP1など変異率の高い倹約遺伝子が確認されている

・ β3アドレナリン受容体遺伝子の場合、一日に29g程度脂肪を余分にたくわえる可能性があり、1年換算だと10kg以上太りやすい計算になる

インスリンと脂肪生成メカニズム

・ インスリンは、すい臓から分泌され、主に血糖値を下げる役割がある

・ 血中のブドウ糖濃度が高くなると、すい臓からインスリンが分泌される

・ インスリンの働きで、白色脂肪細胞が血中のブドウ糖を取り込み中性脂肪に変換する

肥満と糖尿病

・ 肥満時には、TNF-α の働きで、インスリンと白色脂肪細胞の連絡経路が阻害される

・ すい臓がインスリンを分泌し続けることで、すい臓の機能が低下する

・ ブドウ糖が分解されずに尿から排出され、糖尿病となる

・ 日本人のすい臓は欧米人よりも機能、耐久面で劣っている可能性がある

やせ薬

・ 薬に頼るべからず!

 

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