皆さんは「金縛り(かなしばり)」を経験したことはあるでしょうか?
成人のおおよそ4割の方が経験したことがあるという「金縛り」…。
なんとなく「オカルト的な超常現象」と考えている方がおられるようですが、実際は生理的な現象の1種です。
今回は『金縛り(かなしばり)の原因ー幻覚や麻痺はなぜ生じる?』として、
「金縛り」という奇妙な現象の説明をしたいと思います。
「金縛りの原因とメカニズム」から始め、
金縛りにあっている最中にみる「幻覚・麻痺」は単なる恐怖心からくるものではない
ということを説明していきます。
※ お時間のない方は最後の「まとめ」だけお読みください<(_ _)>
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金縛りの原因|幻覚や麻痺はなぜ生じる?
金縛りの原因
まずは「金縛りの原因」から。
「金縛り」とは、「意識は鮮明なのに、体が動かない現象」のことです。
夜目が覚めると、体がまったく動かない…。
何かに体を押さえつけられているような感じがし、遠くでヒトの気配を感じる…。
経験されたことのない方は、「そんなバカな」と思われるでしょうが、実際に体感すると異常な恐怖を感じるものです。
私も昔は、壁に掛けてあったコートがヒトに見え、声すら出せずにおびえていたものです。
金縛りの知識はあっても、しばらくは思いつきませんでしたw
この「金縛り」という現象は、医学用語では「睡眠麻痺」といい、
「脳は起きているのに体が眠っている」ために引き起こされます(=原因)。
「レム睡眠」が主要因になっているのですが、
”レム睡眠” という言葉だけは聞いたことがあるのではないでしょうか。
まずは、「睡眠のメカニズム」から「金縛り」の現象を探っていきます。
金縛りのメカニズム|レム睡眠とノンレム睡眠
睡眠には大きく分けて「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2種類があり、おおよそ90分間隔で入れ替わります。
体はともに眠った状態にありますが、「レム睡眠」の時だけ脳が比較的活動するようになります。
まず、私たちが眠るとすぐに「ノンレム睡眠」がやってきます。
このときは、体も脳も眠ったままですね。
その後「ノンレム睡眠」が90分経過すると、「レム睡眠」に移り脳が活動を始めます。
このときに、一日の情報を整理したり、記憶の定着が行われたりします。
夢を見るのも「レム睡眠」のときです。
再び90分経つと「ノンレム睡眠」に、90分後には「レム睡眠」に…というサイクルを繰り返します。
こういった正常なサイクルを繰り返しているうちは、「金縛り」にあうことはありません。
しかし、「強いストレス」や「不規則な生活」などで睡眠サイクルが乱れる場合があります。
特に「ノンレム睡眠から本来始まるはずが、先にレム睡眠になった場合」に意識が覚めると「金縛り」となります。
一番最初の眠りが「レム睡眠」であることが重要です。
このとき、「はっきりした意識」と「幻覚」から恐怖体験に繋がります。
これで「金縛り」の原因とメカニズムだけは説明できました。
では一体、金縛りにあっている時に見る「誰かに押さえつけられている」や「ヒトの気配」などはなんなのでしょうか。
多くの方は極めて理性的で、単なる恐怖心から幻覚や幻聴をみることはほとんどありません。
少しご自身の経験を思い出してみてください。
一人で夜道を歩いているときに、
「人影がはっきり見える」ことや「誰かの足音が確かに聞こえる」という経験のある方は極めてまれだと思われます。
一瞬そう感じることはあっても、確かめてみると勘違いだと気付くはずです。
しかし、「金縛り」のときには、確かにはっきりと誰かいた…と朝起きてから感じることが多々あります。
実はこの現象も科学的に説明できます。
次は「金縛り」が誘発する「幻覚」について説明していきます。
金縛りの幻覚・麻痺の原因
金縛りがもたらす幻覚の原因自体はたいしたことはありません。
「幻覚・幻聴」はただの「夢」がもたらす現象です。
ただし、通常の「夢」とは性質が異なります。
医学的には「入眠時幻覚」と呼ばれるのですが、
大脳の下にある「橋(きょう)」という場所が深くかかわってきます。
睡眠状態に入ると、橋からアセチルコリンが放出されて、大脳を刺激します。
特に、大脳の後ろ(後頭葉)にある「視覚野」を強く刺激してイメージ映像(夢)を作り出します。
普段の眠りの時は、脳が覚醒しているわけではないので夢をみてもほとんど記憶に残りません。
しかし「金縛り」の状態では、意識がはっきりしている状態で現実と夢のイメージが交錯します。
もう少しわかりやすく説明すると、現実の風景を記憶したまま夢に入るーという感じでしょうか。
意識があることにより、夢が夢だと感じられないほどに鮮明な「体験」とされるわけですね。
「夢」という表現が逆に理解させにくくしてしまったかもしれませんが、
原理としては「はっきりした意識+視覚野への刺激」⇒「幻覚」
と考えていただければ問題ありません。
そのため、最初の睡眠が「レム睡眠」でなかった場合でも、
何らかの原因で意識さえ覚醒すれば金縛りにあう可能性はあります。
以上で、一応「幻覚」については説明したつもりなのですが、
ひょっとしたら「ヒトの気配」や「誰かに押さえつけられている感じ」についてもっと知りたい方がいるかもしれないので、少しだけ補足します。
まず「ヒトの気配」の原因について。
これは、「体が動かないという恐怖心」が「夢」にリンクしたために「確かにヒトがいた」と感じる要因になっています。
夢全般に言えることですが、基本的に悪いイメージ(特に恐怖心)の方が夢と同調しやすい傾向があります。
昔、志村けんさんのバカ殿様で「枕にエッチな本を入れておくとその夢が見られる」というコントがありましたが、
実際には良いイメージをもとに夢が形成されることは多くありません。
これは恐怖をつかさどる偏桃体という場所が、夢をみるときに血液量が増えることに関係しています。
つまり、活発に働いている偏桃体と恐怖心が協力して鮮明なヒトというイメージを作り出しているのですね。
次は「誰かに押さえつけられている感じ=圧迫感・麻痺」の原因です。
これはレム睡眠中に単に息苦しくなっているだけの理由です。
レム睡眠では、交感神経と副交感神経が入り乱れるので、心拍数が乱れ、呼吸が少し苦しくなります。
普段は意識がないので気になりませんが、金縛り中の恐怖心と相まって「圧迫されている」と感じます。
あとは夢がイメージを作り出せば、「確かに誰かが上に乗っていた」と解釈するわけですね。
今回は「鮮明な恐怖体験」に的を絞りましたが、
「なんとなく誰かいたような気がする」という程度の記憶の場合は、単なる恐怖心からきた勘違いの可能性も十分あります。
ここまでの金縛りの原因についてまとめておきます。
金縛りの原因とメカニズム
・ 本来ノンレム睡眠から始まるはずの睡眠が、先にレム睡眠になった場合に生じる
・ このとき、鮮明な意識がある一方で、体は動かず声もほぼ出せない
金縛り幻覚の原因
・ 現実と夢のイメージが交錯することに一因がある
・ はっきりした意識とレム睡眠中の視覚野への刺激が同調し、夢を現実と誤認する
金縛り麻痺の原因
・ レム睡眠中の息苦しさに基づく
最後に「金縛り」にあわない方法について簡単にご紹介します。
金縛りのあわない方法・対処法
「金縛りのあわない方法・対処法」として最も効果的なのは、
ストレスをためず、いつも通りの時間に眠ることなのですが、なかなか難しいですよね。
本当に金縛りが苦手な方に限ったほうが良いですが、
「うつ伏せ」など普段と異なる ”少しだけ” 窮屈な姿勢で寝てください。
最初に説明したように、金縛りの主な原因は「レム睡眠から睡眠が始まること」です。
よって、寝始めた頃に適度な寝返りをうたせることでレム睡眠の導入を防げます。
ただし、普段と異なる姿勢で寝ること自体がストレスにつながる可能性もあり、
もっと言えば、寝る姿勢を調節すること自体がやや困難でしょう。
現実的な対処法としては、就寝前にサプリなど睡眠補助剤を使うことをお勧めします。
余計な出費が増えてしまうのは確かですが、睡眠は生活の要なので、
個人的には寝具とサプリには自己投資としてお金を使うべきだと考えています。
有名どころでは、楽天市場で1位をとって話題になった「ミドリムシサプリ」でしょうか。
私ももう2年近くミドリムシのサプリを推していますが、便が臭くなること以外は効果的なサプリだと思います。
現在使っているサプリがない場合には参考にしても良いでしょう。
また、睡眠の質を高めるという意味で、最近話題の「光目覚まし時計」も有効です。
ただし、こちらはサプリメントと違い即効性はないので、注意してください。
以上、『金縛り(かなしばり)の原因ー幻覚や麻痺はなぜ生じる?』でした!
脳科学はまだまだ発展途上なので、新しい論文が発表され次第追記していきますね。
ただ、あの手の論文は単語が難しくて要約だけ読んで満足している自分がいます笑
「金縛りの原因|幻覚、麻痺のメカニズム」まとめ
金縛りとは?
意識は鮮明なのに、体が動かない現象
金縛りの原因
・ 本来ノンレム睡眠から始まるはずの睡眠が、先にレム睡眠になった場合に生じる
・ このとき、鮮明な意識がある一方で、体は動かず声もほぼ出せない
幻覚の原因・メカニズム
・ 現実と夢のイメージが交錯することに一因がある
・ はっきりした意識とレム睡眠中の視覚野への刺激が同調し、夢を現実と誤認する
・ 偏桃体の活動やレム睡眠中の圧迫感から、恐怖体験が誘発される
金縛り防止法
・ ストレスをためず、いつも通りの時間に寝る
・ 少しだけ窮屈な姿勢で寝る
・ サプリメントの使用やストレス解消が有効