前回は「メンデルの法則の中身」について詳しく解説したので、
今回は『メンデル成功の秘訣ーメンデルがエンドウ豆を選んだ理由』として、
メンデルの実験
について説明します。
メンデル以前は「遺伝の法則性」に対して誰一人、論理的・数学的に説明することはできていませんでした。
では、なぜメンデルはその法則を論証できたのか…?
この章では
メンデルの先見性の高さと緻密な計画
について説明します。
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メンデル成功の秘訣|メンデルがエンドウ豆を選んだ理由
エンドウ豆を選んだ理由を説明するためにも、まずはメンデルの論文をひも解いていきます。
論文の原文はドイツ語なのですが、私はドイツ語が読めないため、ベートソン(W.Bateson, 1902)の英訳著書でご容赦ください。
まず、序文ではHerbertやLecoqなどの遺伝研究者の名を挙げ、彼ら先駆者がいずれも法則を発見できていないことに触れています。
ちょっと強気ですねw
続いて、普遍的な法則を導くためには、適切な実験材料を用いることが肝要だと述べ、その必要条件として以下の3つを挙げています。
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メンデルがエンドウ豆を選んだ理由
メンデルは正確に実験を行うために以下の3つを必要条件と考えていました。
1、いつでも明確に区別できる形質をそなえていること
⇒ 形質の違いが目で観てはっきり分かること
2、人工的な受精操作が可能なこと
⇒ 容易に子孫が作れること
3、高い稔性(ねんせい)を示すこと
⇒ きちんと成長し、子孫を残せること
そしてメンデルは、自家受粉できる(1個体だけで子孫を残せる)マメ科植物に注目し、
その中でも生育速度や栽培の容易さの点で優れていたエンドウ属を見つけ出します。
これが、メンデルがエンドウ豆を選んだ理由であり、成功した要因の1つでもあります。
続いて、メンデルの実際の実験に移ります。
メンデルの実験:エンドウ豆の交配実験
まず業者から取り寄せたエンドウ豆を2年間自家受粉させ続けることで
遺伝子の組み合わせを均質
にします。
前章で取り上げた「ABO式血液型」を例にとると、
それぞれA遺伝子、B遺伝子、O遺伝子1種類しかもたない純系個体を作ることに相当します。
A遺伝子とB遺伝子を持つような個体は基本的に存在しなくなります。
こうすることで、A遺伝子とO遺伝子の個体をかけ合わせれば必ずA遺伝子の特徴を持った個体が生まれる…、つまり
優性の法則
につながるわけです。
メンデルのもう一つの優れた点は、形質の観察を何万回も行ったという点にあります。
例えば、「豆の色」の場合では、黄色が6022個、緑色が2001個という数のデータを取っています。
これだけのサンプルがあれば、黄色:緑色=3:1でなんか法則がありそうだぞ…と確信が持てるわけです。
このサンプル数ならば十分統計解析のできる値で、「カイ二乗検定」から結果が有意だ(偶然ではない)ということが判ります。
統計学についてはまた別の章でお話ししますが、
観察をたくさんしたからこそ、法則の「再現性」や「比較可能性(普遍性・一般性)」の論理的根拠になった
と言えます。
以上、簡単にメンデルについてまとめてしまいましたが、
彼はただ闇雲に研究するのではなく、明確な「遺伝の法則」という仮説を立てたうえで、それに最適な材料と数多の実験で検証を繰り返す…
という現代のPDCAに通じることをやっていたわけですね。
さすが偉人メンデル!!…と褒めたたえたいところですが、
実はメンデルは「遺伝の法則」に都合の良い形質だけを選択していた面もあります。
特に「① 優性の法則」と「③ 独立の法則」は、他の要因の影響を受けやすいため、法則通りにはならないケースが少なくありません。
以上、『メンデル成功の秘訣ーメンデルがエンドウ豆を選んだ理由』でした!
次章では、「メンデルの法則の例外」を紹介します。
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「メンデル成功の秘訣ー メンデルがエンドウ豆を選んだ理由」まとめ
メンデル成功の秘訣
① 実験材料に最適なエンドウ豆を選んだこと
② 結果を数量的に解析したこと
メンデルがエンドウ豆を選んだ理由(エンドウ豆が最適な理由)
1、純系個体を用いることで、形質の違いが明確にわかる
2、容易に育成、繁殖させることができる
結果の数量的解析
1、統計的に有効なサンプル数を実験に供し、7,000以上の観測結果を記録
2、実験結果に基づき法則性を提示