『世界一わかりやすい相対性理論』シリーズの詳細版です。
今回は「特殊相対性理論」の1つである
「光速に近づくと、空間が縮む」
原理についてわかりやすく解説します。
「空間が縮むとはどういうことか」、「空間の歪みとはなにか」を詳しく、わかりやすく説明していきます。
以前の記事である【概要編】または【1、光速に近づくと、時間の流れが遅くなる】をお読みいただいた方を想定していますが、
初見の方でも理解していただけると思います。
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光速に近づくと、空間が縮む|わかりやすい特殊相対性理論Part2
光速に近づくと、空間が縮む|わかりやすい特殊相対性理論Part2
多くの方がここでつまづくので、とにかくわかりやすく説明します。
常識的に考えてしまうと「空間が縮む」なんて信じられないと思うので、
矛盾をなくすためにも架空の思考実験で証明したいと思います。
2つの電車がすれ違う場合を考えてみましょう。
電車Aは100万kmの長さ、電車Bは80万kmの長さで、それぞれの電車の真ん中に人を配置します。
すれ違う速度は、光速c(30万km/s)の0.6倍に相当する18万km/sとしましょう。
光速の0.6倍に設定するのは、最後にすごく気持ちいい結果が得られるためです。
それでは、実験に移ります。
やることは単純で、2つの電車の端が重なった時に、光を真ん中にいる人に向かって発射(照射)するだけです。
左端が重なったときに1発目を、右端が重なった時に2発目を照射します。
すると、どうなるでしょうか?
ゆっくりとみていきましょう。
まず始めに、電車の左端が重なって、その瞬間に電車の真ん中に向かって光を照射します。
電車の右端が重なるまでの間にも、電車は移動し続けています。
Aの電車に乗っている人からみれば、Bの電車に乗っている人は光から逃げるようにして移動していますね。
言い換えると、Bに乗っている人からすれば、Aの人ほど光は進んでいないように見えます。
次に2つの電車の右端が重なって、その瞬間に再び電車の真ん中に向かって光を照射します。
その後、1発目の光がAの電車に乗っている人には光が届きますが、Bの人にはまだ届きません。
この「光がAの人には届くが、Bの人には届かない」というのは、感覚的なイメージ通りでかまいません。
Bは光から逃げる方向に移動しているので、まだ光が届かないというイメージです。
「② 光速度不変の原理」を思い出していただければよりわかりやすいと思いますが、
「光の速さは絶対に変わらない」という絶対条件があるので、
光の照射地点からの距離がAよりもBの方が長ければ、Bに光が届くことはありません。
そのために、電車の速度差を光速の0.6倍(18万km/s)に設定しています。
実はこの記事を最初に執筆していたときは細かく計算式も載せていたのですが、
どうしてもわかりづらくなってしまったので数式はすべて削除してあります。
式がなくても、Bの人に光が届かないというのは理解していただけると思いますので。
では、いよいよ次が最後です。
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最後に、右端で照射された光がBの人に届きます。
ここで、2つの電車の速度の差を18万km/sに設定していたことがいきます。
計算してみるとわかりますが、Bの電車ではちょうど左端の光が届く瞬間に右端の光も届きます。
つまり、両端の光が同時に届くわけです。
左端の光に対してはずっとBは逃げ続けていましたが、右端の光に対しては接近していったために、
右端の光が遅く照射されたにも関わらず、同時に光が両端から届いたわけです。
「それがどうしたんだ」と思われているかもしれません。
確かにAの電車に乗っている人からすれば、何もおかしなことはありません。
Bの電車は、1発目の光からは遠ざかっていって、2発目の光には近づいていった…だから同時に光を感じた、ただそれだけのことです。
ですが、視点を変えてBに乗っている人の立場に立つとどうですか?
Bの人からすると、Aの人が移動しているだけで自分は止まっているように感じています。
その状況で、両端から放たれた光が同時に届きました。
時間にすると、Aとすれ違ってから1.3秒後に同時に光が届いたことになります。
言い換えると、1.3秒前に光は両端から同時に照射されたはずです。
なぜなら、「② 光速度不変の原理」によって「光の速さは絶対に変わらない」のですから。
「同時に照射された」ということは、「同時に2つの電車の両端が揃った」ということです。
もうおわかりでしょうか?
Aの電車の長さは100万km、Bの電車の長さは80万kmでしたね。
「同時に電車の両端が揃った」のならば、Bからすると「Aの電車の長さは80万km」にみえたということです。
これが「2、光速に近づくと、空間が縮む」そのものです。
光の速さに近づくほど、電車はより光から離れたり近づいたりできるので、速度が速いほど空間の縮みも大きくなります。
さらに、今回Aの電車も移動させていたのには理由があります。
BからみてAの電車が縮んでいたように、AからみればBの電車も縮んでみえるのです。
つまり、「光速に近づくと、空間が縮む」のはお互いさまということですね。
説明は以上なのですが、これで理解していただけたでしょうか?
ちなみに、この電車の例は私のオリジナルというわけではありません。
1905年にアインシュタイン自身が発表した「特殊相対性理論」という論文でも似たように説明しているのですが、
それをかなりかみ砕いて理解しやすくしたものです。
私も最初に読んだときは全然イメージができませんでしたが、かみ砕いて考えれば大して難しくなかったことに気づけますよね。
前回の宇宙船の例や今回の電車の例ではかなり表現を変えてはいますが、説明の本質は当時の論文と変わっていません。
正直なところ、これ以上わかりやすい具体例は思いつきそうもないので、
「他の具体例をお願いします」という要望だけはご容赦ください。
それにしても、アインシュタインが26歳という若さでこの理論を提唱するとは…さすが最高の科学者といわれるだけはありますよね。
次回は、特殊相対性理論としては最後の「3、光速に近づくと、質量(=エネルギー)が増える」です。
興味のある方はぜひお付き合いください。
以上、『光速に近づくと、空間が縮む/世界一わかりやすい特殊相対性理論Part2』でした!
最後までお読みいただき、ありがとうございました<(_ _)>
「光速に近づくと、空間が縮む/世界一わかりやすい特殊相対性理論Part2」まとめ
光速に近づくと、空間が縮む
・ 2つの電車がすれ違う場合を考える
・ 電車Aは100万kmの長さ、電車Bは80万kmの長さで、光速の0.6倍の速さですれ違う
・ 2つの電車の端が重なった時に、光を真ん中にいる人に向かって照射する
・ このとき、電車Bでは中央に光が同時に届くことから、電車Aと電車の両端が同時に揃ったように見える
・ よって、B視点では電車Aの長さはBの長さと全く同じようにみえる
・ しかし、本来の電車Aの長さは電車Bよりも長かったため、Bからすれば電車Aが縮んでみえたことになる
・ 電車の速度差が大きいほど縮み幅も大きくなるので、「光速に近づくと、空間が縮む」といえる