地球上に最初の生命が誕生してから現在に至るまで、数多の「進化」が繰り返されてきました。
信じがたいことですが、最初の1種族がヒトやイヌなど様々な多様性をもたらしたのです。
今回は『生物の進化|進化の原因は?退化も進化?中立進化とは?』として
1、進化とは?
2、進化の原因
3、中立進化
について説明していきます。
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生物の進化|進化の原因は?退化も進化?中立進化とは?
進化とは?|退化とゲノム変異・中立進化
進化とは「ゲノムが世代間で変化していくこと≒ゲノム変異の蓄積」です。
もう少しわかりやすく表現すると、
「遺伝情報が親世代から変化することで、姿や能力が変わっていくこと」と言い換えられます。
よって、モグラの目が悪い、蛇に足がないなどの「退化」も進化の一種です。
私たちヒトの場合では、両親の生殖細胞(卵子や精子)の情報をもとに受精卵が作られ、1つの生命体が誕生します。
通常は両親の遺伝子を半分ずつ受け継ぐ形になるのですが、
遺伝情報(DNA)のコピーが失敗するなどして生殖細胞に変異が生じる場合があります。
すると遺伝情報が異なる、つまり何かしらの変化を伴う個体が生まれる可能性があります。
この「変化」が生存に有利であれば「正の自然選択(多くの方が進化と誤認しているもの)」、
不利であれば「負の自然選択:自然淘汰(≠退化)」となるのです。
少しまとめておくと、進化には2つのステップが必要ということです。
1、子供の遺伝情報(ゲノム)が両親とは異なること
2、変化した遺伝情報をもつ個体の割合が集団の中で増えたり減ったりすること
です。
したがって、「進化」といっても生存に有利不利なものばかりではなく、
その多くは有利でも不利でもない「中立な進化」です。
生存に不利でない限りは、
単なる偶然によって変化が集団中に広まっていっただけだ(遺伝的浮動)と考えられています。
例えば、ヒトがビタミンCが合成できなくなった進化などが当てはまります。
この話は最後にするとして、まずはなぜ進化が生じるのかという「進化の原因」について詳しくみていきましょう。
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進化の原因|細胞のコピーミス
進化は「子供の遺伝情報(ゲノム)が両親とは異なること」によって生じると説明しました。
ただし、遺伝情報が変化することは必要条件で、その変化が次の世代に伝わらなければ意味がありません。
すなわち、遺伝子の変異が「子供に受け継がれる生殖細胞に生じる」必要があります。
普通の細胞(体細胞)の遺伝情報が変化したとしても、進化には一切影響を及ぼしません。
では「生殖細胞の変異」とはどのようにして生じるのでしょうか?
実はその多くが、生殖細胞が細胞分裂する際のコピーミスによって生じます。
極めて低頻度ではあるのですが、数万~数百万回に1回ほどの頻度でミスが生じます。
ヒトのDNAは、A(アデニン)、T(チミン),G(グアニン)、C(シトシン)という4つの塩基が並ぶことで、
アミノ酸を作るための情報を提示していますが、その並び方(塩基配列)がコピーミスによって本来の並び方とは変化します。
すると、本来作るはずだったアミノ酸が作れなくなったり、
別のアミノ酸が作られるようになったりし、体の構造に変化をもたらす場合があります。
例えば1つの塩基が置き換わるだけで、赤血球の形状に変化が生じ「鎌状赤血球」となり、
重度の貧血をもたらす「進化」をたどる可能性もあります。
このコピーミスには、塩基の1つが置き換わる「置換」、
新しい塩基が割り込む「挿入」、塩基が失われる「欠失」があります。
例えば、「CAG」という塩基配列が「CCG」に置換されるだけで、
バリンではなくグリシンが作られ、結果としてタンパク質の構成も変わります。
その他の遺伝的変異には、遺伝子が丸ごとゲノム中で移動する「トランスポゾン」という動く遺伝子や、
遺伝子またはゲノム自体が2つに増える「遺伝子、ゲノム重複」があります。
また、原発の事故以降話題になっている「放射線」、
工業問題となっている「化学物質」なども遺伝子の変異をもたらす原因の1つです。
ゲノムやDNAといった言葉が飛び交い、少しわかりづらくなってしまったかもしれませんが、
今回は「ゲノム=DNA+α=遺伝子+α+β」と考えてもらって結構です。
詳しくは『遺伝学』にて詳しく説明していますので参照していただけると助かります。
最後に、「進化」のほとんど占めていると考えられている「中立進化」について説明します。
中立進化と実例|ヒトはなぜビタミンCを合成できない?
進化論を唱えたチャールズ・ダーウィンは「正の自然選択が進化の中心となっている」と考えていました。
彼の考え自体を否定するつもりはありませんが、
現在の進化論では生存に有利でも不利でもない「中立な変異=中立進化」が進化の中心だと考えられています。
つまり、進化のほとんどを「生存競争にほぼ関係のない変異が、単なる偶然によって集団に広まっただけだ」と考えているわけです。
この偶然によって遺伝情報が広まる過程を「遺伝的浮動」と呼びます。
では、始めに述べていたビタミンCの例を挙げてみましょう。
ご存じの方も多いかもしれませんが、ヒトはビタミンCを体内で合成できません。
しかし、哺乳類全体でみればビタミンCを合成できる種がほとんどです。
できないのは、ヒトやサル、ゾウなどごく少数です。
ビタミンCは必須の栄養素なので、自分で作れないと生存に不利なような気がしますが、
ヒトやサルなどがかつて住んでいた森にはビタミンCを豊富に含む果実がたくさんありました。
よって、ビタミンCを作れなくとも果実さえ摂取していれば、生存に不利にはならなかったわけです。
このように、たとえビタミンCが合成できないという大きな変化でも、
遺伝的浮動によって進化がもたらされると現在では考えられており、
生存競争に寄与しない変化が大半だと信じられています。
以上、『生物の進化|進化の原因は?退化も進化?中立進化とは?』でした!
いかがだったでしょうか?
意外と知らない「進化」の1面をご紹介できたのなら、著者冥利に尽きます。
進化に関しては未だに謎とされている課題が多く、なぜ複雑な目などの構造や遺伝子ネットワークが形成されたのかなど、
概要は説明できても論拠にかける点が多々あります。
新たに有力な論文が発表され次第、記事を追加していく予定ですので、今後もよろしくお願いします。
「生物の進化|進化の原因は?退化も進化?中立進化とは?」まとめ
進化とは?ー「退化とゲノム変異、中立進化」
・ 進化とはゲノムが世代間で変化していくこと
・ 退化も進化の一種
・ 変化が生存に有利であれば正の自然選択、不利であれば負の自然選択(自然淘汰)
・ 進化の2ステップは、
1、子供の遺伝情報(ゲノム)が両親とは異なること
2、変化した遺伝情報をもつ個体の割合が集団の中で増えたり減ったりすること
・ 進化の多くは有利でも不利でもない中立な進化
進化の原因ー「細胞のコピーミス」
・ 生殖細胞が細胞分裂する際のコピーミスが主な原因
・ 本来作るはずだったアミノ酸の合成に変化が生じることで、体の構造や機能などに変化がもたらされる
・ 進化の原因として、遺伝子のコピーミスである「置換」、「挿入」、「欠失」の他にも
「トランスポゾン」や「遺伝子、ゲノム重複」、「放射線」、「化学物質」などが挙げられる
中立進化;ヒトのビタミンC例
・ 現在の進化論では生存に有利でも不利でもない「中立な変異=中立進化」が進化の中心だと考えられている
・ 進化の大半は「生存競争にほとんど関係のない遺伝的変異が、単なる偶然によって集団に広まった(遺伝的浮動)」ことが要因
・ ヒトがビタミンCが合成できないという進化も遺伝的浮動によると考えられる