「近年の論文紹介」の第2弾です。
今回は「Physical Review Letters」に掲載された「ピロリ菌」に関する論文を簡単に紹介します。
ピロリ菌は胃の中に住みつく細菌ですが、
これまでピロリ菌が胃酸という強酸性下でも生存できるメカニズムに関しては判明していましたが、
ピロリ菌の遊泳方法(どうやって胃の中を動き回っているのか)については詳しく分かっていませんでした。
もう7年前(2106年)になってしまいますが、遊泳方法に関する論文がいくつか見られるようになってきたため、
今回は『ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲ー どうして胃液の中でも動き回れる?』として、
「ピロリ菌とは?-どうしてどうして胃液の中でも動き回れる?」、「ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲」の2つを紹介したいと思います。
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ピロリ菌の遊泳方法/行動範囲/どうして胃液の中でも動き回れる?
ピロリ菌とは?/どうして胃液の中でも動き回れる?
ピロリ菌は正式名称を「ヘリコバクター・ピロリ」といって、主に胃の中に住みつく細菌です。
胃壁を傷つけるため、胃がんや胃炎、十二指腸潰瘍の原因になると考えられています。
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ピロリ菌は約4,000万人の日本人の胃に生息していると言われていて、
健康な人であれば大きな問題を引き起こすことはありません。
本来、胃の中は強酸性の塩酸などに満ちているため細菌は生息できないのですが、
このピロリ菌は「胃液を中和し、自分の周りにバリアを張る」ことで強酸性下でも生存できます。
ピロリ菌はウレアーゼという「胃の中にある尿素からアルカリ性のアンモニアを作る酵素」をもっています。
このウレアーゼを使って、強酸性にアルカリ性をぶつけ中和しているため、ピロリ菌は強酸性の胃の中でも生息できるのです。
では、ピロリ菌が酸を中和できるのはいいとして、どうやって自由に動き回っているのでしょうか?
周りにアルカリ性のバリアを張るだけでは、泳ぎ回ったり、人が動いて胃が振動するとバリアが壊れてしまいそうなものです。
さっそく今回のメインテーマである「ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲」に関する論文に移行しましょう。
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ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲
ここからは「ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲」について説明していきます。
アメリカ、ネバダ大学の研究チームが「ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲」を調べる実験を行いました。
実験の方法は単純なシミュレーション実験で、まずピロリ菌の酸中和範囲を調べ、その後ピロリ菌の行動を観察しました。
実験の結果として、ピロリ菌は自身の体長の40倍にも及ぶ広範囲の酸を中和しており、
その胃の粘性が弱くなった範囲を自由に動き回っているということがわかりました。
つまりピロリ菌は、広大な範囲を中性にすることで多少の揺れに対応できるようにし、
さらにその範囲の粘性を弱めることで自由に動き回れるようにしていたのです。
ピロリ菌の遊泳方法 ⇒ 中和により粘性を弱めて遊泳
ピロリ菌の行動範囲 ⇒ 自身の40倍の領域
この論文結果だけをみると大したことがないように感じてしまいますが、
ピロリ菌と同じように粘り気の強い領域を自由に動き回る細菌や精子などの遊泳メカニズムの解明に役立つのではないかと考えられます。
以上、『ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲ー どうして胃液の中でも動き回れる?』でした!
ご朗読ありがとうございました<(_ _)>
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「ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲|どうして胃液の中でも動き回れる?」まとめ
「ピロリ菌」とは?-どうして胃液の中でも動き回れる?
・ ピロリ菌は胃の中に住みつく細菌で、胃壁を傷つけ 胃がんや胃炎の原因となる
・ ピロリ菌はウレアーゼ酵素により、胃の中にある尿素からアルカリ性のアンモニアを作る
・ これまで遊泳方法や行動範囲に関しては詳しい調査がなされていなかった
ピロリ菌の遊泳方法と行動範囲
・ ピロリ菌は胃の塩酸などをアンモニアで中和し、粘性を弱めて遊泳していた
・ ピロリ菌の中和範囲は自身体長の40倍に及び、これが行動範囲となっていた